サプライチェーンの課題と必要なこと(可視化編)[shippio レポート]

前回のレポートではサプライチェーンの課題の整理と必要なこととしての対策である可視化、標準化、連携の必要性をお伝えしました。

今回は、サプライチェーンの可視化に焦点をあて、何故サプライチェーンを可視化できていないのか?何故可視化する必要があるのか?何を可視化させるのか?どうやって可視化させるのか?をレポートします。


可視化は、業務などのプロセス改善の第一歩として、プロセスの全体像を把握する為の一般的な手法である。サプライチェーンを可視化することは、そのフローやプロセスに関する業務がどのような流れで行われているかを誰か見ても齟齬がないレベルで図表や数値で目に見える状態にすることであり、それにより課題や問題点を共有することができ、改善のための対策が効果的に行うことができる。


1. 何故サプライチェーンプロセスが見えないのか

より効率的で変化に柔軟なサプライチェーンを追求するために可視化する。全く新しい話ではない。その必要性や重要性は多くの人が認知している。しかしながら、日本のサプライチェーンに関わるプレイヤーたちの業務改善に資する可視化は進んでいない。進まない理由は以下が考えらえる。

① セクショナリズムでコミュニケーションが断絶

サプライチェーンは川上ではサプライヤー、卸売業者、フォワーダー、川下では販売代理店、卸売業者、物流事業者、小売店、自社内では商品開発、調達、生産、物流、営業、コーポレートの各部門など様々な関係当事者がいる。

そのため、共有すべき情報や業務フロー・プロセスのコミュニケーションが断絶されている。各プレイヤーが個別最適を追求すると利害が一致しないケースがあり、残念ながら業務連携が取れていないケースは多い。

② 思い込み、先入観、固定概念、業界慣習

サプライチェーン業界は、思い込み、先入観、固定観念、強い業界習慣が存在していることが厄介な点である。サプライチェーンを支えている物流業界は非常にレガシーな産業である。長い歴史を経ている業界なので、多くの業務プロセスが業界慣習によって成り立っている。他の業界の人間からすると異常や不要と思われる業務やプロセスが繰り返される内に定着し習慣化してしまっている。これまでのやり方を重視・肯定し、不要なプロセスや非効率な業界習慣を盲目的に継続するマインドが強い傾向にある。

また業務設計や業務の遂行の属人性も高い。担当がいないと誰も業務をフォローできないというケースは良くある話だ。業務のやり方は担当(もしくはパートナー会社)任せ、また担当(パートナー会社)も自分しかできない業務を作ることでプレゼンス向上を図る側面も強く、高い専門性であると歓迎・評価してしまう場合もある。その為、組織全体やサプライチェーン全体で業務内容やプロセスを把握できていないケースが多い。担当や部門単独の個別最適の観点からすると、可視化するインセンティブは低くなりがちである。


③ データの分断

業界慣習として、紙、電話、メールでの情報やりとりが一般的であり、データでのやりとりは、一部の大手企業を除き実施されていないのが現状。人が間に入り情報を繋いでいる為、解釈、認識齟齬、情報伝達の量と質が完全に担保できない、口頭などの物理的なコミュニケーションを主要な情報伝達の術に据えている業務やプロセスなどが多く存在し、結果可視化が分断されてしまっている。業務内容をデータで残すという習慣がないことが、より一層可視化のハードルを上げている。


2. 何故サプライチェーンを可視化する必要があるのか

サプライチェーンを可視化するメリットは多く、今後継続的に企業が成長し存続していくためには、現行のサプライチェーンの再評価、及び必要に応じて再構築が急務である。

① コストを削減する

在庫情報、過剰な在庫を防ぐことができるため、在庫コストや商品の陳腐化リスクを防ぎ廃棄コストを下げることができる。業務コストの観点からも人員配置、業務フローを可視化させることで、人員の最適配置、適切な輸送スケジュールの設定など業務効率化を意識、検討、実行するきっかけとなり、業務コストを削減することができる。

② 売上を増やす

更にサプライチェーンの可視化は、売上増にも大きく寄与する。サプライチェーンを可視化させることで、販売の機会損失を防ぐことができる。在庫情報を可視化、輸送情報を可視化することで、より適切な生産指示、購買指示、納入指示を出すことができる。商品切れを予見して、それを防ぐべく、早急な商品拡充に必要なアクションを実行することが可能となる。

③ 損失を減らす

サプライチェーンの可視化が進まないと、課題が全く見えて来ず、何も検証することができない。そのため、不足の事態や実際に事故が起きて初めて課題が浮き彫りになる。問題が予見できないのは問題である。また合理的な判断ができず間違った判断が多くなってしまう。その結果、正しい状況が見えないため混乱が後手に回ったり、対応やリスク管理などが全くできず事故が予見できないなどの事態に陥ってしまう。そして、事故理由も分析できず、打手がなく業務改善に繋がらず業務プロセスが進化できなくなってしまう。


3. サプライチェーンの何を可視化させるのか

サプライチェーンの何を可視化させる必要があるのか、一つ一つ見ていこう。それはビジネスの根幹たる、物、人、金、情報の可視化である。


① 物の可視化

先ずは自社の商品に関する可視化である。在庫情報の可視化は取り組むべき事の一つだ。在庫管理の基本は、入庫管理と出庫管理である。在庫は入庫から出庫を差し引いたものだ。入庫や出庫に関する情報は、先述の通り、川上から川下まで多くの関係当事者が関わっているが、各部門で寸断されていることが多い。例えば、過剰在庫となってしまった場合、過剰な入庫に起因するのか、わずかな出庫に起因するのか。一方で、商品が不足している場合、わずかな調達に起因するのか、過剰な出庫に起因するのか。各部門間にて責任の所在を押し付け合うことになりかねず、利害が一致し難い。全ての部門で在庫情報を共有し、透明性を高め、数値を用いて適切に判断する必要がある。

また同時に生産活動を可視化させることも肝要だ。生産情報、生産能力、生産のライン管理、リードタイム管理などの可視化も必要だ。

そして輸送情報の可視化。船や航空機への積み込み、ヤードや倉庫への搬入、現地での通関などの進捗情報、適正な在庫管理や製品供給に繋げることが可能になる。時間取りに貨物は届くのか、届けられるのか?ということをリアルタイムに把握する必要がある。


② 人の可視化

作業内容の可視化、5W1Hを可視化させることである。

誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どうやってを業務を行うのかを可視化することである。当然のことのように聞こえるが、実行できていない企業、組織、チームは多い。作業内容を明確に定義、可視化させることにより、改善や問題点の共有をすることができる。また、人員あたりの仕事の適正量、仕事の質の適正量も把握することができる。


③ 金の可視化

サプライチェーンは複数社に跨る煩雑なバトンリレーである。バトンを渡すたびにリスクと所有権が誰かへ移転する。移転したタイミングで債権や債務が発生、決済する必要がありキャッシュフローの管理や移転管理の観点から金の可視化はとても大切である。

また、リスクを可視化することは欠かしてはならない点だ。損失発生期待値x最大リスク量が想定しなければならないリスク量である。サプライチェーンに関するリスクとして代表的な例は、以下の通り。

1)自社に起因するリスク:

  • 商品の売越・買越リスク
  • 在庫商品の陳腐化リスク
  • 自社の約定履行リスク

2)外部要因:

  • 調達先、供給先などの破綻リスク
  • 調達先、供給先などの約定履行リスク
  • カントリーリスク
  • 為替変動リスク
  • 環境変動リスク(コロナ、地震、事故、ストライキ、政府不安など)


いずれもリスク量を可視化し、リアルタイムで認知、管理すべきリスクである。

リスクは闇雲に取るものでなく、自社の許容範囲でマネージするものなので、過剰なリスクを取ることは避けるべきである。

またサプライチェーンの強度はチェーンのプロセスの中で一番弱い部分が全体チェーンの強度そのものである。チェーンであるが故にどこか一つのマイルストーンやポイントが止まると全体が止まってしまう。リスク量が商流に比してあまりにも大きい場合は早急に改善を行う必要がある。


④ 情報の可視化

供給情報と需要情報を可視化させることは、サプライチェーン管理の中で重要なポイントであり、最終的に目指すべき姿の一つである。

川上の供給情報を可視化できれば,川下の需要サイドに近い側は、予見し準備することができる。特にコロナ禍においては、密を避けるために製造工場の生産能力の変動が大きい。かかる状況を早期に認識し、他の企業に緊急手配をかけるなど、前広に手をつつことで、自社の生産ラインの停止や減産を防ぐことができる。

そして,正しい生産量を供給する為にも、需要情報の可視化も大切である。特に近年の経済活動のグローバル化に伴い、多くの製品が生産過剰になっている。工場を建設してしまうと稼働率を上げて、それを維持することが至上命題になるためだ。

そのため、現在では需給のバランスでいうと供給過多になる場面が多く、需要サイドの企業の力が強い。したがって買方は自社の需要情報を可視化させない傾向が強く、需要情報の可視化については、事前に戦略的にパートナーシップの座組を確認する必要がある。


4. どうやってサプライチェーンを可視化するのか

① 経営が主導し、現場任せにしない

ボトムアップで課題を吸い上げて、課題を可視化させて解決していくことは大切なことであるものの、可視化に一番必要なものは個別最適ではなく、サプライチェーン全体の最適化である。関係当事者が多い為、全社最適でも視野が狭いぐらいである。現場の個別最適の可視化ではサプライチェーンの全体の可視化は全く進むことがない。

サプライチェーンは荷主企業のビジネス活動における血液そのものであり、経営の最優先事項であり、トップダウンで実行しないことには、正しい目的が共有されず、変革の方向性が

示されず、全く推進力が出ない。

可視化の目的は、現在のビジネスモデルや業務フローの効率化のみを目的にした視座の低いものではない。既存のビジネスモデルの進化・変革、抜本的且つ根本的にあり方を見直すものであり、事業モデル、会社のアイデンティティーそのものを変えるものであり、経営が主導しないことには、小手先の効率化のみに終始してしまう可能性が高い。


② 現場は視座を上げ、そして広げる

 同時に現場の意識改革は非常に大切だ。ありとあらゆる情報、作業内容、コスト、人員、必要なスキルなど全てを可視化させる必要がある。プロセスマップや業務プロセス図をサプライチェーン全体のプロセスと、各社・各者の関係性を視覚的に示す必要がある。

全くそのプロセスに関係ないものが全体の流れ及び関係性が解釈なしに分かるほど、精緻に且つ簡潔に作る必要があるため、可視化に対する意識を変える必要がある。

各関係者から見た切り口で見える化を検討する必要がある。自社観点だけに終始しがちであるが、顧客の観点、サービス品質の観点、商品の観点、パートナーの観点、現場の観点、業界の観点、あらゆる観点から、ミクロとマクロの双方の観点で可視化を模索する必要がある。


③ ツールの活用

可視化のポイントを明確にした後に、業務可視化ツールの導入検討はあるべき姿である。正しく可視化する為には、全てのアクティビティーをデータ化し、関係当事者が同じデータを共有している必要がある。そこに格差やデータ化の断絶が生まれた瞬間に可視化は破綻してしまう。可視化ツールは、サプライチェーンフロー図の作成、サプライチェーンに関わる物、人、金、情報の見える化、そのプロセスの監視、KPIモニタリング、改善後の効果予想や測定などを実現し、企業活動に多くのメリットをもたらす。いきなり様々なツールを導入するのでは無く、目的を明確にした上で、スモールスタートすることをお勧めする。


時代の変革に合わせ自社の課題を正しく認識し、早期に対応していくことが、不可欠であり、それに乗り遅れると業界や組織の存在価値は大きく低下していく。

サプライチェーンの可視化無くして、サプライチェーンの業務の効率化、売上増、コスト削減などは実現し得ない。経営の合理化を図る為にも、先ずは可視化が大事な最初の一歩である。


もしサプライチェーンの可視化を検討されている荷主さんがいらっしゃいましたら、是非当社の国際物流サービスShippioをご活用をご検討下さい。



Reference

Shippioはクラウド貿易業務ソフトと国際輸送を提供する「デジタルフォワーダー」です。
海上輸送(FCL/LCL)、 航空輸送、共に全世界の国際輸送をご依頼頂けます。Door to Door輸送もお任せ下さい。貿易業務の見える化・脱属人化・業務効率性を向上するクラウド貿易業務ソフトも開発・提供しています。
お気軽にご相談ください