初めての貿易(輸出)|所要日数、費用、インコタームズ、輸送手配のタイミングを解説

2019.04.02

この記事では、初めて貿易を行う方向けに、輸出において躓きがちなポイントを、対話形式でご紹介します。
主に、インコタームズ(貿易条件)や輸出入のスケジュール、費用を中心にご紹介します。

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Aさん:これから輸出を行いたいと考えている貿易未経験者
Bさん:フォワーダー業者で働く貿易手配のプロ

初めての貿易①業務範囲と費用を決めるインコタームズ

A「これから輸出を行っていきたいのですが、今まで外国の取引先と輸入や輸出を行ったことがなく、どこから手を付けて良いのか分かりません…。」

B「輸出や輸入を行いたいがどうすればいいのか分からない、という時には、貿易手配を行うフォワーダー業者に相談していただくのが一番です。ただ、いくつか基本的なポイントはあらかじめ荷主さんの方で把握しておいた方が、フォワーダーへの輸送手配の発注などもスムーズに進みます。」

A「外国の顧客と取引をするにあたって、貿易手配を行う前に取引先と最低限決めておかなければならないことなどはありますか?」

B「国内顧客との取引と最も異なる点としては、貿易の際にはインコタームズをきちんと決めておく必要があります。」

A「インコタームズ…とはなんですか?」

B「パリに本部を置く国際商業会議所によって定められた、国際基準の貿易条件のルールでのことです。インコタームズによって、物品の引き渡し場所、危険の移転時点、運送費の負担区分、保険料の負担区分などが、売り主と買い主の間で取り決められます。」

A「どのようなインコタームズを定めるかによって、売り主と買い主のどちらが、どこまでの責任を負うかが変わってくるわけですね。」

B「一例として、船便による輸出の際に一般的に採用されるインコタームズの一つに、CIF(Cost, Insurange, Freight,運賃保険料込み条件) があります。このインコタームズの下では、貨物が輸出国の船の上に積まれた時点で、危険負担が輸出者(売り主)から輸入者(買い主)に移ります。輸出者は日本国内の陸送、輸出通関費用、船運賃、貨物保険料を負担します。輸出者にとっては輸送をコントロールしつつも、貨物のリスクを早い段階で輸入者に移せるという、使い勝手の良い条件となっています。」

B「一方で、DDP(Delivered Duty Paid,関税込み持込み渡し条件)というインコタームズでは、輸出者がほぼ全ての危険負担と費用(輸出通関、海上運賃、海上保険料、輸入国側の関税、輸入国での国内輸送)を負います。基本的に輸入者にとってメリットの大きい条件です。このように、一口に輸出または輸入と言っても、インコタームズをどう決めるかによって、自社が手配するべき範囲や払うべき費用が大きく異なってきます。」

A「輸送手配をフォワーダー業者に依頼する前に、取引先とインコタームズをきちんと定めておくことが重要だということがよく分かりました。ちなみに、インコタームズのパターンは何種類あるのですか?」

B「現在使われているインコタームズ2020では、11のパターンがあります。インコタームズについての詳細は、『インコタームズで所有権の移転はされない|定義されている責任範囲について徹底解説』を是非ご参照ください。」

初めての貿易②所要日数と通関

A「外国に貨物が届くまでには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?」

B「港間の輸送にかかる時間でみると、例えば成田空港から上海までだと、飛行機で4時間程。東京港から船で行くと、3-5日ほどかかります。」

A「もう少し遠方の、ヨーロッパへの輸送などですとどうなりますか。」

B「例えば成田空港からオランダのアムステルダムであれば、飛行機で12時間前後。東京港から船だと、1ヶ月~1ヶ月半かかります。飛行機は出発港から目的港への直行便が基本ですが、船便は目的港までの道中で、様々な港に寄港します。そのため、飛行機と船では、単なる速度の違い以上に、輸送日数が異なってきます。」

B「また、実際の輸送の際には、港間の輸送だけではなく、Door to Door (輸出者の拠点から輸入者の拠点まで)の輸送にどのくらいの時間がかかるのかを意識しておく必要があります。」

A 「なるほど。輸出者の拠点から輸出港までと、輸入者の拠点から輸入港までで、各数日ほど陸送の時間を見積もっておくことにします。」

B「そうした各国内での陸送の時間に加えて、通関にかかる時間も考慮しておく必要があります。貿易の際には、輸出国側と輸入国側でそれぞれ輸出通関と輸入通関を通す必要がありますが、特に輸入通関では、各国とも関税徴収や輸入制限に該当するかの審査などがあるため、時間がかかりがちです。」

A「具体的には通関にどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか。」

B「輸出者および輸入者の貿易経験や、貿易品目、相手国などによって通関にかかる時間は異なってくるため、一概には言えないというのが正直なところです。また、航空輸送なのか海上輸送なのかによっても通関の所要時間に違いが生まれます。参考までに、日本の輸入通関を例に取って見てみましょう。JETROによれば、海上輸送の場合、一般貨物の本船入港(日本到着)から輸入許可までの輸入手続き全体に要する平均所要時間は2.5日(59.5時間)です。そのうち、申告から許可までの通関所要時間は2.4時間となっています。なお、予備審査制(到着前に申告書類を提出する制度)を利用した際の到着から許可までの平均所要時間は1.8日となっています。他にも、各種制度を利用することで関税手続きを短縮できる可能性はあります。

B「一方、航空輸送の場合ですと、通関手続きは比較的迅速になります。一般貨物の航空機の到着から輸入許可までの輸入手続き全体に要する平均所要時間は0.5日(12.8時間)で、そのうち申告から許可までは0.3時間です。予備審査制を利用すると到着から許可までの平均所要時間は0.3日(6.5時間)、到着即時輸入制度を利用すると0.1日(1.8時間)まで短縮されます。『通関作業とは?|輸出通関・輸出通関それぞれの流れや必要な書類などを解説』を是非ご参照ください。」

初めての貿易③輸送手配のタイミング

A「各工程でかかる時間を考慮すると、東京から上海への海上輸送であれば、顧客のもとに今から2週間後くらいに届けられるというイメージですかね。」

B「輸送プロセスにかかる時間だけでなく、フォワーディング業者に輸送手配を発注するタイミングにも注意が必要です。特に、現在は運転手不足などにより、ドレージの供給が逼迫しています。ドレージとは、港から目的地(輸出者または輸入者の拠点)までのコンテナの陸上輸送のことです。コンテナ船で輸出する場合には、空のコンテナを積んだ車を輸出者の拠点まで集荷手配し、輸出者の拠点で貨物をコンテナに詰め、港へ運ぶという流れになります。このドレージが輸送需要に対して不足しているという状況から、1ヶ月先であっても車を回せないというような事態も時には発生しているようです。集荷の1ヶ月以上前にフォワーダーに発注しておくと安心といえます。」

A「近年輸出入がどんどん増えているという話は聞いていましたが、実際の輸送現場ではそのような状況になっているのですね。季節などによって混み方が違うというようなことはあるのでしょうか?」

B「やはり港も季節によって混み方は異なります。年末年始や大型連休の前後などは、特に輸送需要が大きく、船やトラックの予約が取れなかったり、取れたとしても混雑により港での荷役が遅れたりということが考えられます。特に今年のGWは10連休となるため、かなりの混雑が予想されます。この時期に輸出入を考えている方は、早め早めの手配をしておいた方が良いでしょう。」

A「輸出入を実際に行う前に、インコタームズとスケジュール感の概要を把握しておくことが出来ました。ありがとうございました。」

B「貿易をするにあたって、まだまだよくわからないこともあるかと思います。具体的な輸送案件については、フォワーダー業者に相談してみましょう。」

Aさん、Bさんの会話を通して、貿易をする際には、インコタームズとスケジュール感をまず把握しておくことが重要であるということが、お分かり頂けたかと思います。

Shippio は国際輸送を手配するデジタルフォワーダーです。

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