原産地証明書ってなに?必要となるケース、種類、手続き、認定基準を解説

2023.05.19

原産地証明書は、輸出または輸入される貨物の国籍を証明する書類です。
近年はEPA(経済連携協定)が盛り上がっており、関税の支払いが免除されたり、減税されるため、貿易における原産地証明の重要性は高まる一方です。

しかしながら、グローバル化が進んだ現在、一国内で生産が完結する製品というのは少なく、外国から原材料を輸入して生産したり、複数の国で生産工程を分業したりするのが当たり前になっています。貨物の国籍というのはどのように判断すれば良いのでしょうか?原産地証明書の種類、手続き、認定基準についてご紹介していきます。

 

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原産地証明書が必要となるケース

原産地証明書は輸出または輸入される貨物の国籍を証明する書類です。原産地証明書は、国際物流の際に必ずしも必要な書類ではありません。取引先国の規則によって必要となる場合があります。

また、取引国との自由貿易協定が存在する場合、その協定に基づく関税優遇措置を受けるために原産地証明書が必要な場合があります。

また、 消費者が商品の品質や安全性を判断する一つの要素として、役に立つ場面もあります。特に食品や化粧品などの体に直接影響を及ぼす製品に関しては原産地が重要視されるケースもあります。

原産地証明書の取得① 種類

原産地証明書は大きく2種類あります。

【原産地証明書(一般の原産地証明書)】

輸入国の法律や、契約書、L/C(信用状)などの要求により原産地証明が必要になった際に、発行する書類。この原産地証明書の役割としては、輸入関税率の確定、商品の原産地表示、通商手段の適用、内国民待遇の判定、などがあります。

この一般の原産地証明書は、全国各地にある商工会議所(日本商工会議所は除く)で発給を受けます。最寄りの商工会議所は、商工会議所のサイトで調べることが出来ます。

【特定原産地証明書(第一種特定原産地証明書)】

EPA税率の適用のために、原産地を証明する書類。EPAでは、協定国からの輸入品に限り、通常の関税よりも低いEPA関税(無関税となる品目も多い)を適用します。ここで、輸入される製品が協定国産のものなのか、それとも協定外の第三国産のものなのかを、厳格に区別する必要が生じます。そこで、EPA協定国が原産地であるということを証明するために必要になるのが、この特定原産地証明書なのです。各国とのEPAに基づいて発給されるため、EPAを結んでいない国向けには発給されません。

この特定原産地証明書は、日本商工会議所で発給を受けます。ただし、日本・シンガポールEPAにおける特定原産地証明書の発給は、日本商工会議所ではなく、一般の原産地証明書と同様に全国各地にある商工会議所で行います。

原産地証明書の取得② 発給手続きの流れ

ではここで、実際にどのような流れで原産地証明書を発給していけば良いのかを見ていきます。

【(一般)原産地証明書】

 

1. 誓約する(貿易登録をする)

各地商工会議所で貿易関係書類を申請するには、まず、「真実かつ正確な書類にて申請を行うこと」などを誓約する(貿易登録をする)必要があります。貿易登録は初回のみで、一度行えば以後の書類申請の際は行う必要はありません。ただし、異なる商工会議所で書類申請を行う場合には、別途商工会議所ごとに貿易登録が必要です。なお、この誓約に違反した場合には、証明発給停止・登録抹消という罰則措置を、全国すべての商工会議所において受けることなります。

2. 申請書類を作成・準備する

原産地証明書の申請に必要な書類は、基本的には以下の3点です。

・証明依頼書
商工会議所の申請センターに備え付けられています。申請の際に記入します。

・原産地証明書
原産地証明書は、申請者が自ら作成します。証明書のフォーマットは、各商工会議所のサイトからダウンロードできます(東京商工会議所のサイトでダウンロードする場合はこちら)。使用言語は、荷印を除いて全て英語です。商工会議所で購入できる所定用紙に印刷する必要があります。

・コマーシャルインボイス
典拠資料として、コマーシャルインボイスを一部提出する必要があります。

※ワシントン条約に該当する動植物を輸出する場合や、船積後6ヶ月を経過した後の申請の場合などには、別途典拠資料が必要になります。

3.申請する

各地商工会議所の証明センター窓口にて、各書類と共に原産地証明の発給を申請します。一例として東京商工会議所は、営業時間は月〜金(祝日除く)で9:00~12:00,13:00~16:30です。なお、郵送やFAXでの申請は受け付けていません。詳しくは、各商工会議所のホームページをご確認ください。

4.原産地証明書を受け取る

提出した書類に特に不備がなければ、午前中に申請した場合には当日午後、午後に申請した場合には翌日午前中に発給が受けられます。原産地証明書を受け取る際に、1件につき非会員は3240円、会員は1080円の証明手数料を支払う必要があります。

【特定原産地証明書】

1.HSコードを確認する

まず、輸出したい商品のHSコードを把握しましょう。HSコードとは、品目ごとに定められている世界共通のコードで、関税分類番号ともよばれます(HSコードについては、「何をどうすれば?HSコードの調べ方の解説」をご参照ください)。

2.EPA税率を確認する

HSコードを元に、輸出したい商品がEPA税率を享受できるかを調べます。日本在住者であれば、JETROが契約しているデータベース「World Tariff」を使って無料で調べることが出来ます。なお、EPA税率がWTO税率(EPAを利用しない限り、WTOに加盟している国との貿易に適用される税率)と同じ場合や、WTO税率よりも高い場合すらあるので、EPAを利用することがお得なのかどうかはきちんと確認する必要があります。

EPA税率がWTO税率と変わらないまたはそれよりも高いという状況があり得るのは、EPAを締結した時点よりも後にWTO税率が引き下げられたことで、締結当時はお得だったEPA税率のメリットがもはやなくなっているというケースがあるからです。

3.EPA毎の原産地規則を確認する

どのような基準で商品を「日本産」と判定するかについては、各EPA毎に規定されています。日本商工会議所のサイトでは、各EPA毎の原産地規則に関する書類を確認することができます。どのような基準があるかについては、次節で詳しくご紹介します。

4.企業登録をする

初回に限り、日本商工会議所への企業情報の登録が必要です。登録は無料で、有効期限は2年間です。こちらのページから、企業登録に進むことが出来ます(個人としての登録も可能です)。

5.原産品判定依頼を行う

企業登録を済ませた後、「特定原産地証明書発給システム」から、オンライン上で原産品判定依頼書を提出します。原則として、3営業日で判定結果が通知されます。また、一度原産品と判定された物品については、それ以降は判定依頼を行わずに繰り返し特定原産地証明書の発給申請を行うことが出来ます。ただし、原料調達先や原料価格の変更などにより、原産地判定結果に影響が生じる場合には、再度の申請が必要になります。

6.特定原産地証明書の発給申請を行う

原産品判定の結果、原産品と認められた場合には、特定原産地証明書の発給申請を行うことができます。この申請も、「特定原産地証明書発給システム」からオンライン上で行います。原則2営業日で、申請結果を受け取ることが出来ます。特定原産地証明書の発給手数料は、1件につき、基本料+加算額がかかります。基本料は2000円、加算額は申請品目数×加算単価(500円。同一品目で既に20回以上発給を受けている場合は50円)です。

原産地証明書の取得③ 認定基準

最後に、どのような基準で原産地の判定が行われるのか、ご紹介します。

【(一般)原産地証明書】

各地商工会議所が発給する原産地証明書において、「日本産」と判定されるためには、以下2つのうちいずれかに基準を満たしている必要があります。

1. 完全生産品
「一の国又は地域において完全に生産された物品」です。具体的には、日本国内で採れた鉱物資源や農産物がこれに当たります。

2. 実質的変更基準を満たす産品

上記の完全生産品以外の場合、すなわち外国産の原料や原産地未確認の原料を用いて生産された産品の場合には、実質的な加工や製造が国内で行われていれば、日本産であると認定します。ここでの「実質的な加工や製造」とは、関税番号(HSコード上4桁)の変更を伴う生産工程を指します。

例えば、日本のある食品メーカーが、外国からオレンジ(関税番号0805)と砂糖(1701)を輸入して、日本国内でマーマレード(2007)を製造したとします。この場合、日本で加工を行った結果、原材料から関税番号が変わっているので、このマーマレードは日本産として認められます。

一方で、日本のあるパソコンメーカーが、CPU(8542)と液晶画面(8471) を外国から輸入して、日本国内でパソコン(8471)を製造したとします。この場合、日本で最終生産工程は行われているものの、原材料の液晶画面と最終財のパソコンでは関税番号が変わっていないため、日本産としては認められません。

【特定原産地証明書】

特定原産地証明書の発給基準については、各EPAごとに個別に定められていますが、大きく分けると次の2種類があります。

1. 関税分類変更基準

上でご紹介した、一般原産地証明書の際の実質的変更基準と同じ基準です。なお、EPAによっては、HSコード上4桁ではなく上2桁の変更を必要とする場合(原産地判定が厳しい)や、HSコード上6桁が変更されていれば良いとしている(原産地判定が易しい)場合もあります。

2.付加価値基準(VA基準)

国内で生まれた付加価値が、ある生産物の付加価値全体の一定以上の割合を占めていれば、その国を原産として認める基準です。

例えば、上記のマーマレードの例を再度取り上げてみましょう。日本の食品メーカーが、外国からオレンジ60円分と、砂糖10円分を輸入して、マーマレード1瓶を国内生産し、100円で輸出するとします。このとき、日本国内で生み出された付加価値は、100-60-10 =30円で、マーマレードの付加価値全体(100円)の30%となります。仮に、輸出先の国とのEPAで、マーマレードに対する付加価値基準が40%と定められていた場合は、このマーマレードは日本産としては認められません。

まとめ:原産地証明書が必要となるケース、種類、手続き、認定基準

ここまで、原産地証明について一通り紹介してきました。原産地証明は少し手間がかかりますが、原産地証明をしてEPAを利用することで、関税をかなり抑えられることも多いです。また、国や品目によっては、原産地証明無しではそもそも輸入が認められない場合もあります。

私達Shippioは国際輸送を手配するフォワーダーです。具体的にこの品物をこの国へ輸出する場合にはどうすればいいのか、など輸出入で不安なことがありましたらお気軽にShippioにご相談ください。

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