越境ECでアパレルを輸出!関税や国別(中国・アメリカ・EU)の注意点を解説

2019.05.20

グローバル市場が一体となり、国境を越えた取引が当たり前となる今日、アパレル業界でも新たなビジネスチャンス「越境EC」が急速に広がりを見せています。しかし、これらの可能性を最大限に活用するためには、各国の関税ルールや市場特性を理解することが不可欠です。


特に、世界最大の消費市場である中国、アメリカ、そしてEUのそれぞれには独自の規制と消費者行動が存在します。この記事では、アパレルビジネスを越境ECで展開する際の重要なポイント、特に各国の関税と注意点について詳しく解説します。未知の市場に飛び込む前に、必要な知識を身につけ、成功への道を切り開きましょう。

越境ECを通じたアパレル輸出の可能性

世界のアパレルEC市場規模は、2018年時点で約55兆円、2022年には70兆円を超えると見込まれています。近年、あらゆる商品がECを通じた国際取引を拡大していますが、その中でもアパレル製品の越境ECは特に注目すべき市場といえます。

基本的に外国では日本よりも越境ECを通じた購買活動が盛んに行われている傾向があります。そして、各国において最も多くの人が越境ECを通じて購入しているのはアパレル製品です。アジアから欧米まで非常に広い範囲で、約半数の人が越境ECを通じてアパレル製品を購入しています。

ここまで、ECを通じたアパレル製品の輸出というのが非常に盛り上がっている分野であるということを見てきましたが、具体的にはどのような国に注目していけばよいのでしょうか。

EUは2012年から2015年にかけては世界最大の市場で、2025年時点でも高いシェアを保つと見込まれていますが、やはり伸び率は中国がダントツです。2025年には約67兆円になると推定されており、アメリカやEUの1.5倍以上の市場になると見込まれております。市場規模から見るに、中国、アメリカ、EUの順に、アパレル製品の輸出先として魅力的だと言うことができます。

ECでのアパレル輸出の際に気をつけるべき免許・規制

アパレルEC市場の概況と、狙うべき市場がわかったところで、アパレル製品の輸出に関する法規制について見ていきましょう。

【中国】

衣料品は輸入自由品目であるため、特に輸入規制などはありません。ただし、環境保護と安全性の観点から、古着の輸入は禁止されています。ほとんどの衣料品は、入国貨物通関書が不要です。衣料品はHSコード61類、62類に分類され、関税率は7%~25%、輸入増値税率は17%です。

【アメリカ】

米国は数量割当制度がありますが、2005年1月のWTO繊維衣類協定で加盟国については廃止されましたので、WTO加盟国である日本からの輸出に際して輸入規制はありません。衣料品の販売規制も特にありません。

特筆すべき法規制を挙げるとすれば、防炎織物法(Flammable Fabric Act)による防炎規制があります。衣料品は、この規定に適合する難燃処理済み製品である必要があり、特に子供のパジャマなどには厳しくこの基準が適用されます。消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission: CPSC)の基準による税関での検査を通らなかった製品が、留め置かれてしまうことになります。

【EU】

EUにおいても、WTO加盟国に対しては衣料品の輸入割当は廃止されており、特に輸入規制はありません。EU指令1541/98の廃止により、2011年10月24日より原産地証明も不要となりました(日欧EPAの特恵関税などの制度を利用する場合は必要になります)。

特に注意を払うべき法規制としては、 欧州議会・理事会規則(EC)1907/2006「化学物質の登録、評価、認可および制限(REACH)に関する規則」による発がん性染料および有害物質規制があります。主な物質としては下記2点ですが、他に難燃剤なども対象になることがあるため、輸入者を通じた関係機関への確認を事前に行っておくことが望ましいです。

a. 登録番号43:特定芳香族アミン類22物質(附表8)を生成するおそれのあるアゾ顔料・染料(附表9)
b. 登録番号51/52:可塑剤として樹脂に添加されたフタル酸エステル(PAE)(合成皮革のジャンパーやTシャツのプリント部分など)

総じて、お酒などに比べると衣料品は法規制が緩く、輸出しやすい製品だと言うことができるでしょう。

アパレル輸出にオススメの越境ECサイト

次に、越境ECを使った具体的な輸出方法を紹介していきます。
ECサイトを通じてアパレル製品を販売する際には

 

  • 自社ECサイトにより販売する方法
  • ECプラットフォームに出品して販売する方法

 

の2つの方法があります。

自社サイトは、販売手数料がかからない点と、自由にECサイトのカスタマイズができる点が魅力であります。

一方で、サーバー代がかかる点、自社でサイトの開発を行う必要がある点、そして集客を自社でやる必要がある点がデメリットです。特に、海外の人に自社のサイトへアクセスして貰う必要があるため、自社ECサイトで輸出を行うのは、ブランド力がある企業や海外向け広告費を十分に確保できる企業でないと難しいかもしれません。

次に、ECプラットフォームに出品して販売する方法について紹介します。手数料はかかるものの、サイトの開発や集客を自前でやる必要がなくなり、輸出へのハードルは一気に下がります。ECプラットフォームは大きく分けて、楽天のように様々な品目を扱う総合系プラットフォームと、ファッション特化型プラットフォームの2つがあります。

国境を越えた取引が可能な総合プラットフォームとしては、Rakuten Global (主にアジア)、Amazon, ebay(米国、欧州)、Tmall, JD, Kaola(中国)などがあります。これらのサイトは有名で情報量も多いので、この記事ではファッション特化型プラットフォームをいくつかご紹介していきます。

1. vip international(中国)


中国大手ECプラットフォームVipshopの越境EC。中国の越境ECとしては、Kaola, Tmall に次いで3番手です。2017年時点で、3.3億の注文数と1.2兆円の売上高を誇ります。アパレルや化粧品などに強みを持ち、フラッシュセール(タイムセールを頻繁に打つことで、購買意欲を煽る商法)と直接仕入れ(モール型サイトのように単に出品場所を提供するのではなく、vipshopがメーカーや代理店から商品を仕入れ、消費者に販売する。正規品であることがvipshopにより保証されるので、中国で高い評価を得ている。)によってユーザーを拡大してきました。

2.etsy(米国を中心に世界各国)

アメリカでは、Amazonとebayが全体のシェアとしては圧倒的なため、量を捌きたいのであればそれらのサイトを利用するのが良いかもしれません。しかしながら、Amazonやebayでは、消費者は基本的に価格で購入商品を決める傾向にあります。したがって、少量生産で付加価値の高い製品を販売するのであれば、このetsyがオススメです。

etsyはアパレル製品やアクセサリー、インテリアなどを扱うNY発のECサイトです。アメリカに限らず200の国・地域で取引が行われており、世界中に3300万人の買い手を持っています。ハンドメイド品などが多く、出品者の多くが中小企業や個人となっています。

サイトの説明が非常に丁寧で、出品のコツや販売のノウハウなどの日本語の記事が豊富に用意されています。また、スマホのアプリで出品管理などを行うことができるのも嬉しいポイントです。

3.Zalando(ヨーロッパ)

ドイツ発の欧州最大級のアパレルECサイト。2017年の流通総額は、6400億円と推定されています。ZOZOTOWNの同年の流通総額が2600億円であることを考えると、その大きさが分かります。ハイストリートファッションから一流ブランドまで国内外のブランド1,500の商品を取り扱っています。ヨーロッパ各地の物流センターを拠点とした物流網と、購買データの活用が特徴で、Amazonと比較されることも多い企業です。

4.farfech(欧州を中心に世界各国)

世界中から2,000以上のブランドが集まるオンラインショッピングモールです。700のセレクトショップから、毎シーズン20万点の商品が出品されます。

利用者は欧州が中心ではありますが、170以上の国・地域に販売・配送しています。日本にもオフィスを構え、中国市場にも展開していくなど、現在最も注目されているアパレルECの一つです。

アパレルECサイトの中にも様々な種類があり、サイトをうまく選べば中小企業や個人でも世界中へ商品を販売していくことが可能であることが分かります。

 


ここで紹介したECサイト以外にも輸出する手段はあります。また、一口にアパレル製品といっても衣服、靴、アクセサリーなどその性質は多岐にわたります、
ご自身にとってもっとも適切なECサイトを見つけてみてください。

国際輸送に関する不安があれば、お気軽にShippioにご相談ください。

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Reference

eccLab 2017年EC流通総額ランキング

JETRO 衣料品の現地輸入規則および留意点:中国向け輸出

JETRO 衣料品の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出

JETRO 衣料品の現地輸入規則および留意点:EU向け輸出

農林水産省 平成29年度:日本からの電子商取引(EC)を用いた農林水産物・食品の輸出に関する調査報告書